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(562) 青木 茂/三太物語

 昭和20年代、神奈川県北部の山村にくりひろげられた物語は「三太」「留」「定」「花子」たちと新任の「花荻先生」をめぐる庶民的な善意と冒険のお話です。
 美しい花荻先生は、三太たちが授業中ヤマブキの鉄砲でいたずらしても「おもしろい鉄砲ね。皆んなで作って、お休み時間に撃ちっこしましょう」なんて言ったり、犬のチョビをスルメで丸めこんで大ホームランにしてしまったり、イタチの最後っ屁で窒息した子をいきなり背負って「とんでもない香水」をオーバーに染みつかせてしまったり、子ども達にとって目が離せない存在です。
 三太は野性的で勉強はきらいで泳ぎや魚とりが上手く面倒見のよい少年。お転婆なのにいかにも女の子っぽい花子。穏やかでひょうきん者の留。人格者の定。身の回りに見かける普通の子らを生き生きとドラマティックに描きだしているところが、この「三太物語」のいまなお新鮮なところでしょう。
 傷の保護に効き目があるからと蛇の皮を怪我をした花荻先生の足にまいて気絶させたり、折角捕まえたドでかい鰻を教室に隠しておいたので先生に見つかってしまい、オラの鰻だと言えなくて昼飯時に火あぶりの刑にされた匂いに悔しがったり、カッパ退治に行って「土左イ門」になりかかったりと、平成の時代にあっては憧れにも似た豊かな自然と遊ぶ子どもらの姿はユーモラスでのびのびとして光かがやいています。ほどよく分かり易い方言での鮮やかな描写は、面白く読みやすく、児童文学をこえて大人の心をも揺さぶります。