(702) 赤川次郎『昼と夜の殺意』
水城韻子は、幼い頃から、ヴァイオリン一筋に打ち込む、世間知らずの女子大生。姉の澄音はピアノでは天才肌であるが、韻子とは正反対で、奔放な性格である。そして、母の貞子にはこの二人に音楽家として、大成させたいという、その為には、どんな犠牲をも払うという意気込みがある。
たまたま韻子は同じ大学の水木から、母と、韻子が師事することが出来た音楽界の大物との浮気現場の写真を渡される。それは韻子の為であろうことは明白だ。
だが、それが縁で韻子と水木は恋仲になる。韻子にとっては、初めての恋だった。実は水木は名うてのプレイボーイだったのだが…。
ある日、韻子に日本ではトップクラスのカルテットへの入団のオーデションの話が持ちあがったのが、全ての事の始まり。オーデションをめぐって母とのちょっとした喧嘩がもとで、韻子は家出をしてしまう。韻子には、恋人の水木しか頼る者がない。が、水木の裏切りにより、家に連れ戻されてしまう。
韻子は、ヴァイオリンに打ち込むことでしか、やるせない思いをぶつけることが出来ない。
ある日、韻子は水木への思いを断ち切る為に彼を呼び出して、ホテルへ誘った。そして、彼をすっぽかした、その日、水木が殺された。
韻子は、水木が澄音とも関係を持っていたこと、澄音が水木の子を流産し、他にも妊娠させた娘がいることをも知ることになる。折りしも、母の浮気にまつわる脅しもが、韻子を悩ませる、が、思いがけず、その脅迫者が何者かにより殺される。水木は名うてのプレーイボーイ、卑怯な脅迫者、誰もむしろ事件は迷宮入りでも、との思い…。
そうこうしているうちにオーデションの日を迎えた。家には、澄音と、行き場が無いと言って、一夜の宿を貸した、水木の子を宿した娘と二人、そこで思いもかけない結末が…。韻子のカルテット入団の決定と澄音の死をもって終わる。
この本も、赤川作品独特の、諸手をあげて、万事解決と、納得し難い、何か余韻を残すような、せつない終わり方である。それが赤川作品の魅力でもあるのだが…。